きゅうりとなすに割り箸を刺した、あの飾り。名前を精霊馬(しょうりょううま)といいます。
作り方自体は5分で終わります。迷うのはたいてい、この2点です。
- きゅうりとなす、どっちが行きでどっちが帰りなのか
- 頭をどっちに向けて置くのか
この記事では、まずこの2点に答えたうえで、作り方から処分までを2026年の日程に沿って通しで説明します。
先に答え|きゅうりが行き、なすが帰り
覚え方は簡単で、細長いほうが馬、丸みのあるほうが牛です。形をそのまま動物に当てはめているだけなので、野菜の名前ではなく形で覚えると間違えません。
なすが牛である理由には、もうひとつ言われていることがあります。お供え物を牛の背に載せて、たくさん持って帰ってもらうという意味です。急がせるのは来るときだけで、帰りは荷物を積んでゆっくり、という発想です。
この2つを並べると、お盆という行事が何をしているのかがよく分かります。早く会いたい、でも帰るのは惜しい。その気持ちを、そのまま2つの野菜にしたものが精霊馬です。
用意するもの
- きゅうり 1本(できるだけまっすぐで、太さのあるもの)
- なす 1本(ずんぐりして、座りのよいもの)
- 割り箸 2膳(つまようじ・竹串・麻がらでも可)
- キッチンばさみ、または包丁
- 敷くもの(半紙、白い紙、小皿、真菰のむしろなど)
足は1体につき4本なので、割り箸なら2膳で足ります。伝統的には麻がら(おがら)を使う地域が多くあります。迎え火を焚くときに使う、あの麻の茎です。スーパーのお盆コーナーで迎え火セットと一緒に売られていることが多いので、こだわりたい方はそちらを。
作り方(5分)
- 野菜を洗って、水気を拭き取る。濡れたままだと傷みが早くなります
- 割り箸を8本に折る。長さは3センチから4センチ。切り口が斜めになるように折ると刺しやすい
- どちらが頭かを決める。きゅうりはヘタのある側、なすはヘタのある側を頭にするのが一般的です
- 足を4本刺す。前足2本、後ろ足2本。まっすぐ下に刺すこと。斜めに刺すと倒れます
- 立たせて、ぐらつきを直す。刺す深さで高さを揃えます
- 半紙か小皿の上に置く。直接置くと水分でシミになります
うまく立たせるコツ
失敗の9割は足が斜めに入っていることです。野菜は丸いので、勢いよく刺すと箸が横に逃げます。
最初につまようじで下穴を開けてから割り箸を差し込むと、まっすぐ入って一発で決まります。なすは皮が硬いので、この方法が特に効きます。
もうひとつ。なすは重心が高いほうに寄っているので、太いほうを頭にすると安定します。ヘタ側を頭にするのが一般的ですが、どうしても倒れるなら向きを入れ替えて構いません。
置く向き|これがいちばん迷うところ
結論から書くと、迎える日は内側、送る日は外側が最も広く見られる作法です。
つまり、16日にくるっと向きを変えるだけです。難しく考える必要はありません。
ただし、地域差がかなりある
向きの作法は全国で統一されていません。よく見られるバリエーションは次のとおりです。
- 最初から馬は内向き、牛は外向きに置く(役割で固定する)
- 期間中ずっと内向き(帰る向きに変えるのは寂しいという考え方)
- 東西で決める(西方浄土のほうへ頭を向ける)
- 精霊棚の左右に置く(向きより配置を重視する)
迷ったときの決め方。家に去年までの写真が残っていれば、それに従うのがいちばん確実です。なければ、上の表のとおり「13日は内、16日は外」で問題ありません。向きを間違えたから失礼にあたる、ということはありません。年長の親族に確認できるなら、それが最善です。
どこに置くか
基本は精霊棚(盆棚)の上です。仏壇の前に小さな机を出して、その上に飾ります。
精霊棚を組まない家も増えています。その場合は次のどれかで構いません。
- 仏壇の前、または脇。いちばん自然な置き場所です
- 玄関先。迎える意味を強く出したい場合。ただし直射日光を避けてください
- 窓辺や棚の上。仏壇がない家庭ではここで十分です
気をつけたいのは置き場所の温度です。8月の日当たりのいい場所に生の野菜を4日間置くと、確実に傷みます。直射日光の当たらない、風の通る場所を選んでください。
いつ作って、いつまで飾るか
7月盆の地域は、7月13日から16日に読み替えてください。
なお2026年は8月13日が獅子座新月と一粒万倍日に重なります。ただし精霊馬の作法とは関係がないので、日取りとしてはいつも通り13日に飾って構いません。
途中で傷んできたら
8月に生野菜を4日間置くわけですから、傷むことは普通に起こります。
傷んだまま置いておくほうが趣旨から外れます。しなびた、カビが出た、匂いが出たという時点で、新しいものに差し替えるか、下げてしまって構いません。もったいないという気持ちより、清潔に保つことのほうが供養として筋が通っています。
処分の仕方
かつては川や海に流す、土に埋めるのが一般的でした。しかし現在、川や海に流すのは避けてください。廃棄物の投棄にあたる可能性があります。
現実的な方法は次の3つです。
- 白い紙に包み、塩を少し振って可燃ごみへ。いちばん現実的で、失礼にもあたりません。半紙がなければ白い紙で構いません
- お寺のお焚き上げに出す。菩提寺があれば受け付けているか聞いてみてください。お盆明けに受け付けるお寺があります
- 庭に埋める。土のある家ならこれが伝統に最も近い形です
食べるのは避けるのが一般的です。お供えしたものは食べていただくという考え方もありますが、精霊馬は4日間常温に置いたうえ、割り箸を刺した穴から傷みます。衛生面からもすすめられません。
やらないほうがいいこと
- そのまま生ごみに捨てる。包んで塩を振るというひと手間だけで、扱いが変わります
- 川や海に流す。前述のとおりです
- 翌年まで取っておく。生野菜なので現実的ではありません。繰り返し使いたいなら、木製やちりめん細工の市販品を選んでください
- 傷んだまま16日まで置く。差し替えるか下げてください
作らない家もある
精霊馬は全国共通の決まりごとではありません。
浄土真宗では、亡くなった方はすぐに仏になるという考え方をとります。そのため「お盆に霊が帰ってくる」という前提の飾りつけを行わず、精霊馬も基本的に用意しません。
また地域によっては、野菜ではなく藁で作るところ、精霊馬の習慣自体がないところもあります。
周りの家がやっているから、というだけの理由で無理に合わせる必要はありません。ご自分の家の宗派と、その土地の慣習を優先してください。
まとめ
- きゅうりが馬で行き、なすが牛で帰り。細長いほうが馬と覚える
- 足は割り箸を4本。つまようじで下穴を開けると失敗しない
- 向きは13日が内向き、16日が外向き。地域差があるので家の慣習が最優先
- 置き場所は直射日光を避けて風の通るところ
- 処分は白い紙に包んで塩を振り、可燃ごみへ。川や海には流さない
- 浄土真宗など、作らない宗派もある
作法の細部は、調べれば調べるほど食い違いが出てきます。それは、この習慣が全国でそれぞれに育ってきた証拠でもあります。
早く来てほしい、ゆっくり帰ってほしい。その2つが形になっていれば、向きが多少違っても伝わるものは同じだと思います。
よくある質問(FAQ)
Q. 精霊馬のきゅうりとなすは、どっちが行きでどっちが帰りですか?
きゅうりが馬で、迎えるとき、つまり行きにあたります。足の速い馬に乗って一刻も早く帰ってきてくださいという意味です。なすは牛で、送るとき、つまり帰りにあたります。歩みの遅い牛に乗って、名残を惜しみながらゆっくり戻ってくださいという意味と、たくさんの供物を牛に載せて持ち帰ってもらうという意味があります。細長いほうが馬、丸みのあるほうが牛と覚えると間違えません。
Q. 精霊馬はどちらの向きに置きますか?
最も広く見られるのは、迎える13日は家の内側に向け、送る16日は外側に向けるという置き方です。ご先祖様が入ってくる方向と、帰っていく方向に頭を合わせる考え方です。ただし地域や宗派によって、馬は内向き牛は外向きで固定する、東西で決めるなど別の作法もあります。迷ったときは、家に去年までの写真が残っていればそれに従い、なければ内向きから外向きへ変える形で問題ありません。
Q. 精霊馬はいつからいつまで飾りますか?
2026年の月遅れのお盆であれば、8月13日の朝から夕方までに用意し、8月16日の送り火まで飾るのが基本です。13日の迎え火より前に作っておいても構いません。夏場は野菜が傷みやすいので、前日の12日に作るくらいがちょうどよい家庭も多いです。7月盆の地域は7月13日から16日に読み替えてください。
Q. 精霊馬の処分はどうすればいいですか?
かつては川や海に流したり土に埋めたりしましたが、現在は避けてください。最も現実的なのは、白い紙か半紙に包み、塩を少し振ってから自治体の分別に従って可燃ごみとして出す方法です。お寺によってはお焚き上げを受け付けているところもあるので、菩提寺があれば相談してみてください。庭がある家なら土に埋めても構いません。食べるのは避けるのが一般的です。
Q. 精霊馬を作らない地域や宗派もあるのですか?
あります。浄土真宗では、亡くなった方はすぐに仏になるという考え方をとるため、お盆に霊が帰ってくるという前提の飾りつけを行いません。精霊馬も基本的に用意しません。また地域によっては、馬と牛ではなく藁で作る、精霊馬の習慣自体がないというところもあります。ご自分の家の宗派と地域の慣習を優先してください。
Q. きゅうりやなすがないときは何で代用できますか?
形が近ければ他の野菜でも構いません。細長いものならズッキーニやとうもろこし、丸みのあるものならピーマンやかぼちゃでも意味は通ります。近年は木製やちりめん細工の精霊馬も市販されており、毎年繰り返し使えるので集合住宅では扱いやすい選択肢です。大切なのは素材ではなく、迎えると送るという二つの気持ちを形にすることです。
Q. 足に使う割り箸は何本必要ですか?
1体につき割り箸1膳を4本に折って使うのが基本なので、馬と牛の2体で割り箸2膳です。割り箸のかわりに、つまようじ、麻がら(おがら)、竹串でも構いません。伝統的には迎え火にも使う麻がらを用いる地域が多くあります。長さは3センチから4センチほどに揃えると安定します。
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